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後継者のいない会社を第三者へ譲渡するとき 従業員、取引先、金融機関及び家族へ、いつ何を伝えるか

公開 2026年10月27日更新 2026年10月27日

この記事の位置付け

事業承継M&Aの関係者へ譲渡を伝える時期と順序に関するメインのページです。本ページは、会社を譲り渡す経営者の側から、従業員、取引先、金融機関及び家族へ伝える段階と内容をご説明します。情報の管理の方法は買主の探索のページをご参照ください。

▶ 事業承継M&A・後継者がいない会社の売却にお困りではありませんか

▶ 買主の探索 候補先の選び方、打診の順序及び情報が漏れないための管理

▶ 初期の打診とノンネームシート 開示する情報の範囲と、秘密保持契約を締結する時期

▶ 譲渡の後の統合 売主が引き継ぐ義務と、引継ぎの期間の定め方

▶ 経営者保証の解除 譲渡に際して個人保証を外すための手順と、外れない場合の対応

▶ 少数株主がいる会社の売却 株式の集約の方法と、集約ができない場合の進め方

後継者が見つからず、会社を第三者へ譲り渡すことを考え始めた経営者の方が、早い段階で突き当たるのが「いつ、誰に話せばよいのか」という問題です。長年一緒に働いてきた従業員に隠しごとをしているようで心苦しい。取引先には筋を通したい。家族には早く相談したい。他方で、話した相手から噂が広がり、従業員が辞めたり、取引先が離れたりすることも心配です。どちらの気持ちも、会社を大切にしてきたからこそ生じるものです。

結論から申し上げますと、検討の段階で譲渡の話を知る人は、経営者ご本人と、ごく限られた方にとどめるのが原則です。従業員全体と取引先に伝えるのは、最終契約の締結の後とすることが一般的です。金融機関には、基本合意の後、経営者保証の扱いを協議する段階で説明を始めます。伝える相手と順序を前もって決めておくことが、雇用と取引を守りながら譲渡を進めるための前提となります。

本ページでは、情報が漏れた場合に起きること、秘密を守る方法、各段階で伝える相手と内容、雇用と取引の継続を譲渡の条件に盛り込む考え方、そして引継ぎの期間について、順に整理します。

目次
  1. 譲渡の話は、段階に応じて伝える相手を広げていきます
  2. 準備が整う前に情報が漏れると、何が起きるのか
    1. 従業員の離職
    2. 取引先の動揺
    3. 交渉条件への影響
    4. 漏れてしまった場合に、まず行うこと
  3. 検討の段階で秘密を守るための手当て
    1. 秘密保持契約を、誰と、どの内容で結ぶか
    2. 社内で知る人の範囲を決めておく
    3. 資料の受渡しと面談の管理
  4. 家族と、株式を持つ親族には、いつ、何を伝えるか
    1. 配偶者その他のごく近い家族
    2. 株式を持つ親族
    3. 役員を務める親族と、取締役会の承認
  5. 基本合意の後に伝える相手と、伝える内容
    1. 主要な金融機関
    2. 資料の作成に関わる幹部と、顧問の専門家
  6. 最終契約の締結からクロージングまでに伝える相手と順序
    1. 役員及び幹部へ、従業員全体より先に伝える
    2. 従業員への説明会で伝える事項
    3. 主要な取引先への説明と、同意の取得
    4. 仮設例 最終契約の締結日からの1週間
  7. 雇用と取引の継続は、譲渡の条件として交渉に盛り込みます
    1. 株式譲渡では、雇用主である会社は変わりません
    2. 事業譲渡の場合は、従業員ごとの承諾を要します
    3. 雇用の継続を条件とするときの考え方
    4. 取引の継続と屋号
  8. クロージングの後に伝える相手と、引継ぎの期間
    1. クロージングの後に伝える相手
    2. 引継ぎの期間の定め方
  9. いま確認していただきたいこと
  10. 当社及び弁護士法人M&A総合法律事務所の関与
  11. よくあるご質問
    1. 信頼している幹部の1人にだけは、早めに相談したいのですが。
    2. 従業員から「会社を売るのですか」と聞かれたら、どう答えればよいですか。
    3. 取引先との契約に、株主が変わる場合の定めがあるかどうか分かりません。
    4. 譲渡がまとまらなかった場合、既に伝えた相手にはどう説明すればよいですか。
  12. まとめ

譲渡の話は、段階に応じて伝える相手を広げていきます

事業承継M&Aは、ご相談、買主の探索、意向表明、基本合意、デュー・ディリジェンス、最終契約の締結、クロージングという順に進み、全体で6か月から12か月を要することが一般的です。譲渡の話を伝える相手は、この段階に合わせて少しずつ広げていきます。

出発点として押さえておきたいのは、一度伝えた情報は取り消すことができないという点です。迷ったときは「まだ伝えない」側に置き、必要が生じた段階で、必要な相手にだけ伝えます。

段階 主に伝える相手 伝える内容
検討及び買主の探索の段階(基本合意の前) 経営者ご本人、配偶者その他のごく近い家族、株式を持つ親族、必要に応じて経理の責任者 第三者への譲渡を検討していること、協力のお願い。買主候補の名称は伝えません
基本合意の後(デュー・ディリジェンスの期間) 主要な金融機関、資料の作成に関わる最小限の幹部、顧問の税理士等の専門家 譲渡の予定、経営者保証の扱い、資料の準備への協力の依頼
最終契約の締結の後(クロージングまで) 役員及び幹部、従業員全体、主要な取引先、その他の取引金融機関 譲渡が決まったこと、買主の概要と方針、雇用と取引の扱い、今後の日程
クロージングの後 その他の取引先及び仕入先、許認可の所管の官庁等 株主及び代表者の変更、新しい担当者と引継ぎの体制

この表は一般的な目安であり、業種、取引先との契約の内容及び買主の方針によって前後します。主要な取引先との契約に株主の変更について同意を要する旨の定めがある場合や、買主が特定の幹部との面談を求める場合には、伝える時期を個別に設計します。全体の進め方は、ご案内のページ「事業承継M&A・後継者がいない会社の売却にお困りではありませんか」に整理しています。

準備が整う前に情報が漏れると、何が起きるのか

譲渡を検討している事実が、準備の整わないうちに外部へ伝わった場合に起き得ることを、相手ごとに整理します。いずれも、生じた影響を後から回復することが難しいものです。

従業員の離職

譲渡の検討の事実が従業員に伝わりますと、将来への不安から退職者が生じることがあります。先に辞めていくのは、他社でも通用する技能や資格を持つ人、つまり会社にとって大切な人であることが少なくありません。人材に依存する事業では、離職がそのまま事業の価値の低下につながります。反対に、誠実であろうとして準備の段階で従業員に説明した場合には、取引が成立しなかったときに、動揺だけが社内に残ります。

取引先の動揺

取引先に伝わりますと、取引の縮小や与信の見直しにつながることがあります。噂の段階では誰も正確な説明をしませんので、不安だけが先に広がります。

交渉条件への影響

離職や取引の縮小が生じますと、買主は事業の価値が下がったとして、価格の引下げ、代金の一部の支払の留保、追加の条件を求めることがあり、取引そのものを見送られることもあります。売主の側も、噂が広がった状態では交渉を長引かせることができず、交渉力が弱まります。

漏れてしまった場合に、まず行うこと

まず、誰に、どこまで伝わっているかを確かめます。次に、噂が広がる前に、経営者ご自身から従業員へ説明することを検討します。ただし、確定していない事項を確定的に述べてはなりません。主要な取引先と金融機関には、事業を続ける方針を自ら伝え、交渉の日程も見直します。秘密保持契約の相手方から漏れた疑いがある場合の法的な対応は法律事務に当たりますので、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

検討の段階で秘密を守るための手当て

検討の段階は、買主候補とのやり取りが最も多くなる一方で、社内にはまだ何も伝えていない時期です。この時期の手当ては、契約、知る人の範囲、資料と面談の管理の3つに分けて考えます。

秘密保持契約を、誰と、どの内容で結ぶか

最初に、ご相談を受ける当社との間で秘密保持契約を結びます。買主候補には、まず会社名を伏せたノンネームシートで関心の有無を確かめ、関心を示した相手とのみ秘密保持契約を結んでから、会社名を含む資料を開示します。開示の段階の詳細は、初期の打診とノンネームシート 開示する情報の範囲と、秘密保持契約を締結する時期をご覧ください。

買主候補との秘密保持契約では、譲渡に関する協議が行われている事実そのものを秘密の対象に含めること、口頭で伝えた情報も含めること、情報を知ることができる者を限ること、対象会社の役員及び従業員を勧誘しないこと、売主の承諾なく取引先や金融機関に接触しないこと、協議の終了後に資料を返還し又は消去すること、有効期間を契約の終了後2年から3年とすることが定められているかを確かめます。

もっとも、秘密保持契約は漏れた後に責任を問う根拠にとどまり、漏れること自体を防ぐのは、開示する情報の段階的な管理です。秘密保持契約の条項の作成及び審査は、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

社内で知る人の範囲を決めておく

検討の段階で社内に知る人を置く場合は、経営者と経理の責任者に限るのが一般的です。決算書や取引先別の売上高の資料を作るには、経理の責任者の協力が欠かせないためです。それ以外の役員及び従業員には、原則として最終契約の締結の後に伝えます。知る人を置くときは、誰に、いつ伝えたかを一覧にし、口外しないことを書面で約束してもらいます。

資料の受渡しと面談の管理

資料及び電子メールでは会社名を用いず、記号による案件の呼称を用います。資料は電子メールに添付せず、閲覧の記録が残る保管領域で受け渡します。買主候補との面談は自社の会議室を避け、助言者の事務所又は貸会議室で行います。現地の視察は、従業員の勤務時間外に行うか、取引先の来訪という名目によります。あわせて、主要な取引先と競合する会社など、打診をしてはならない先を、探索に着手する前に一覧にしておきます。除外先の一覧の作り方は、買主の探索 候補先の選び方、打診の順序及び情報が漏れないための管理に整理しています。

家族と、株式を持つ親族には、いつ、何を伝えるか

家族と親族は、譲渡の影響を直接に受ける立場にあり、株式を持っている場合には、その協力がなければ譲渡そのものが成り立ちません。

配偶者その他のごく近い家族

配偶者には、検討の早い段階で伝えることが多いものです。譲渡の後の生活の設計、役員退職慰労金の受取り、経営者保証の扱いは、いずれも家計に直結します。伝えるときは、ほかの家族や知人に話してよい範囲も確認しておきます。後継を打診したご子息又はご息女がいる場合には、第三者への譲渡を進める前に、継ぐ意思がないことを改めて確かめておくと、後の行き違いを防げます。

株式を持つ親族

兄弟姉妹やその相続人が株式を持っている場合には、とくに注意を要します。株式譲渡では、買主は株式の全部の取得を求めることが通例ですので、他の株主の協力を得られるかどうかが譲渡の成否を左右します。そこで、買主候補に打診する前に、株主名簿と実際の保有の状況を突き合わせ、協力を得られる見込みを確かめておきます。

この段階で伝えるのは、第三者への譲渡を検討していること、株式を譲り渡す協力をお願いしたいこと、口外しないでほしいことにとどめ、買主候補の名称は伝えません。協力の約束は、最終契約の締結までに書面で確認します。名義のみを借りた株式、相続の手続が済んでいない株式、連絡の取れない株主がある場合の判断、並びに相続及び遺留分に関する事項は法律事務に当たりますので、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

役員を務める親族と、取締役会の承認

定款に株式の譲渡の制限の定めがある会社では、株式の譲渡について会社の承認を要します。承認の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役会を置く会社では取締役会の決議により、取締役会を置かない会社では株主総会の決議により行います(会社法第139条第1項)。したがって、取締役である親族その他の役員には、遅くとも承認の手続までに伝える必要があります。実務上は、最終契約の締結の後、従業員全体より先に伝えます。

基本合意の後に伝える相手と、伝える内容

基本合意書を結び、買主によるデュー・ディリジェンスが始まりますと、伝えなければ進まない相手が出てきます。ここでも、相手と範囲を絞ることが基本です。

主要な金融機関

経営者保証の解除の協議には数か月を要することがありますので、基本合意から1か月ないし2か月の時点で、主要な金融機関に第1回の説明を行うのが通例です。伝える内容は、譲渡の予定、買主の概要(買主の同意が得られる範囲)、譲渡の後の事業計画と返済の見通し、経営者保証の扱いです。最終契約の締結までに、各金融機関の意向を書面で確認します。早すぎれば情報が漏れる危険があり、遅すぎれば金融機関の内部の決裁が間に合いません。

資料の作成に関わる幹部と、顧問の専門家

デュー・ディリジェンスで求められる資料のうち、経理の責任者だけでは用意できないものがある場合には、その資料を作ることのできる幹部に、必要な範囲で伝えることがあります。伝える前に、時期と相手について買主と認識を合わせ、本人には口外しないことを書面で約束してもらいます。買主が最終契約の前に特定の幹部との面談を求める場合も、時期を締結の直前とし、相手と人数を絞ります。決算や労務の資料の準備には、顧問の税理士や社会保険労務士の協力を求めることもあります。

最終契約の締結からクロージングまでに伝える相手と順序

最終契約を結んでからクロージングまでは、1か月程度の期間を置くことが多くあります。この期間に、従業員への説明、取引先への挨拶と同意の取得、金融機関への説明を行います。譲渡を関係者に広く伝えるのは、この段階です。

役員及び幹部へ、従業員全体より先に伝える

役員及び幹部は、従業員から質問を受ける立場にあります。従業員全体と同時に初めて聞いたのでは、部下の不安に答えることができません。そこで、従業員全体への説明の直前に、役員及び幹部へ個別又は少人数で説明し、協力を求めます。間を空けすぎると話が広がりますので、時間差は同日又は翌日程度にとどめます。

従業員への説明会で伝える事項

第1に、譲渡の理由です。後継者がいないこと、会社と雇用を残すために第三者への譲渡を選んだことを、経営者ご自身の言葉で伝えます。第2に、買主の概要と方針です。買主の代表者に同席を求め、直接説明してもらう方法もあります。第3に、雇用の扱いです。株式譲渡であれば、雇用契約の相手方は会社のままであることを伝えます。第4に、労働条件と処遇について、買主と合意している範囲です。第5に、経営者ご自身の今後の関わり方です。第6に、質問を受け付ける窓口です。

説明の文言は、買主と事前に確認しておきます。買主と合意していない事項を、従業員を安心させるために約束してはなりません。決まっていないことは、いつ頃までに決まるかを示して伝えるほうが、信頼を保てます。

主要な取引先への説明と、同意の取得

取引先との契約の中には、株主や支配権が変わる場合に相手方の同意を要する、又は相手方が契約を解除できるという定めを置くものがあります。チェンジ・オブ・コントロール条項と呼ばれる定めです。この定めがある取引先からは、クロージングまでに事前の承諾を得ます。経営者ご自身が訪問し、取引を続ける方針を伝え、買主の担当者を紹介します。承諾の取得がクロージングの前提条件とされている場合には、日程に余裕を持たせます。

仮設例 最終契約の締結日からの1週間

仮に、従業員30名の製造業の会社が、月曜日の午前に最終契約を結び、クロージングを1か月後とするとします。伝える順序の一例は次のとおりです。

時期 伝える相手 伝え方
月曜日の午後 役員及び幹部 個別又は少人数での面談。翌朝の説明会での役割を依頼
火曜日の朝 従業員全体 説明会。買主の代表者が同席し、方針を説明
火曜日から金曜日 主要な取引先、取引金融機関 経営者が訪問し、買主の担当者を紹介。同意を要する契約は承諾書を受領
翌週からクロージングまで その他の取引先及び仕入先 訪問又は書面による挨拶

実際の順序は会社の事情により変わりますが、要点は、従業員が取引先や外部から先に話を聞くことのないよう、伝える相手の間を空けないことにあります。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

雇用と取引の継続は、譲渡の条件として交渉に盛り込みます

従業員の雇用と取引先との関係を守るには、譲渡の条件として買主に示し、契約に定める必要があります。

株式譲渡では、雇用主である会社は変わりません

株式譲渡は、会社の株主が変わる取引です。会社の法人格はそのまま続きますので、従業員の雇用主は引き続き会社であり、労働契約もそのまま存続します。株式譲渡によって労働条件が当然に変わることもありません。もっとも、譲渡の後の人事や処遇は、新しい株主の下での会社の判断に委ねられます。雇用の継続を条件として明示しておく必要があるのは、このためです。

事業譲渡の場合は、従業員ごとの承諾を要します

事業譲渡では、会社が事業を他の会社へ譲り渡しますので、従業員の雇用主が変わります。使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができませんので(民法第625条第1項)、譲受会社へ雇用を移すには、従業員それぞれの承諾を要します。方式ごとの労働契約の扱いの判断は法律事務に当たりますので、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

雇用の継続を条件とするときの考え方

雇用の継続を望む場合には、意向表明書を受け取る前の段階から、譲れない条件として買主候補に示しておきます。意向表明書と基本合意書の段階で買主の方針を確かめ、最終契約では、買主が譲渡の後に守る事項を定める誓約条項として盛り込むことを検討します。検討する項目は、対象とする従業員の範囲、雇用を維持する期間、賃金や退職金の制度の扱い、義務とするか努力にとどめるか、守られなかった場合にどうなるかです。

他方で、特定の幹部が退職しないことを売主が約束する形は避けます。従業員が辞めるかどうかは、売主の手の及ばない事柄だからです。最終契約の条項の考え方は、株式譲渡契約書の交渉 表明保証、補償及び誓約条項において売主が確認すべき事項で述べています。契約書の条項の作成及び審査は、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

取引の継続と屋号

取引の継続、屋号の存続、拠点の維持についても、買主の方針として確かめ、必要に応じて最終契約に定めます。ただし、取引を続けるかどうかを決めるのは取引先ですので、買主に約束してもらえるのは、買主の側で決められる事項に限られます。

クロージングの後に伝える相手と、引継ぎの期間

クロージングの後に伝える相手

代金の受領と株主名簿の書換えにより譲渡が完了しますと、代表者が変わる場合の変更の登記、許認可の所管の官庁への変更の届出、金融機関への届出を進めます。その他の取引先及び仕入先には、挨拶状又は訪問により、株主と代表者が変わったこと、新しい担当者及び引継ぎの体制を伝えます。譲渡の理由は統一した文言で伝え、その文言は買主と事前に確認しておきます。

引継ぎの期間の定め方

多くの取引では、譲渡の後の一定期間、前の経営者が引継ぎに関わることが条件とされます。取引先への同行、業務の手順の伝承、従業員への説明が主な内容です。役員として残る場合は6か月から2年、顧問として関わる場合は6か月から1年が通例です。「必要に応じて協力する」とのみ約しますと紛争の原因となりやすいため、期間、職務の内容、稼働の頻度及び報酬を具体的に定め、最終契約の交渉と同じ時期に合意しておきます。

相談の窓口を明確にし、少しずつ身を引いていくことも、引継ぎの一部です。期間と報酬の定め方は、譲渡の後の統合 売主が引き継ぐ義務と、引継ぎの期間の定め方をご覧ください。

いま確認していただきたいこと

第1に、譲渡の検討について既に話した相手がいないかを振り返り、相手と日付を書き出してください。第2に、主要な取引先との契約書を集め、株主や支配権が変わる場合の定めがあるかを確かめてください。第3に、株主名簿と実際の保有の状況が合っているか、株式を持つ親族と連絡が取れるかを確かめてください。第4に、金融機関からの借入れと経営者保証の一覧を作ってください。第5に、雇用、取引、屋号など、譲渡の後も守りたい条件に順位を付けてください。これらは、伝える時期と順序を決めるための材料になります。

当社及び弁護士法人M&A総合法律事務所の関与

当社は、関係者へ伝える時期と順序の設計、社内で知る人の範囲と開示の段階の管理、除外先の一覧の作成、従業員への説明会や取引先への挨拶の準備、雇用と取引の継続に関する希望の整理と買主との条件の調整、資料の受渡し及び日程の管理につきまして、M&Aの助言としてご支援します。当社の報酬は完全成功報酬制であり、着手金及び月額報酬はかかりません。

他方、秘密保持契約及び株式譲渡契約書の条項の作成及び審査、情報の漏えいが生じた場合の法的な対応、労働契約の承継その他の労働法上の判断、相続及び遺留分に関する事項、株式の名義の帰属の判断並びに連絡の取れない株主に関する会社法上の手続は、弁護士でなければ行うことができない業務に当たります。これらにつきましては、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。また、税額の計算及び税務上の取扱いの判断は税理士の領分ですので、当社では取り扱いません。

よくあるご質問

信頼している幹部の1人にだけは、早めに相談したいのですが。

伝えた時点から、その方は秘密を抱えたまま働くことになります。伝える場合は、資料の作成など協力を頼む具体的な理由があるときに限り、口外しないことを書面で約束してもらってください。買主候補が決まる前に伝えますと、取引が成立しなかった場合に、その方の不安だけが残ることもあります。

従業員から「会社を売るのですか」と聞かれたら、どう答えればよいですか。

強く否定するうそは避けてください。後に譲渡を発表したときに、信頼を失います。「会社の将来については、いろいろな可能性を考えている。現時点でお伝えできる決定事項はない。決まった段階で私から直接話す」というように、うそをつかず、確定していないことは述べないという線で答えるのが1つの方法です。答え方は前もって決めておいてください。

取引先との契約に、株主が変わる場合の定めがあるかどうか分かりません。

まず主要な取引先との契約書を集め、一覧にしてください。契約書が見当たらない取引先も、その旨を記録しておきます。同意を要する定めがある場合には、クロージングまでに承諾を得る段取りを日程に組み込みます。定めの解釈や効力の判断は法律事務に当たりますので、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

譲渡がまとまらなかった場合、既に伝えた相手にはどう説明すればよいですか。

検討の段階で伝えた相手が、家族や経理の責任者などに限られていれば、説明の負担は小さく済みます。基本合意の後に伝えた金融機関や幹部には、交渉が終わったことと、事業を従前どおり続ける方針を、経営者ご自身から伝えてください。伝える範囲を段階的に広げることは、その備えにもなります。

まとめ

後継者のいない会社を第三者へ譲り渡すとき、譲渡の話は段階に応じて伝える相手を広げていきます。検討の段階ではごく近い家族、株式を持つ親族及び経理の責任者に限り、基本合意の後には主要な金融機関と最小限の幹部へ、最終契約の締結の後には役員及び幹部、従業員全体、主要な取引先へ、間を空けずに伝えます。

情報が準備の前に漏れますと、従業員の離職、取引先の動揺、交渉条件の悪化を招きますので、秘密を守る手当てを探索の前に整えてください。雇用と取引の継続は、早くから譲渡の条件として示し、最終契約に定めることで形になります。

当社はM&Aの仲介及び助言を行う会社です。訴訟、交渉の代理、法律事務の取扱いなど、弁護士でなければ行うことができない業務は取り扱いません。これらに当たる部分は、弁護士法人M&A総合法律事務所へお取次ぎします。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

後継者のいない会社の譲渡をご検討の経営者様に向けて、当社の取扱内容、進め方及び費用の考え方を次のご案内に整理しています。

なお、秘密保持契約及び株式譲渡契約書の作成及び審査、労働契約の承継に関する判断、相続及び遺留分に関する事項その他の法律事務につきましては、弁護士法人M&A総合法律事務所において承っています。

03-6435-8418受付 8:00〜21:00(土日祝含む)相談申込